健康保険は加入者を等級付けすべきでない

健康保険について、加入者を等級付けして、保険の利用額が少ない人の保険料を安くし、逆に利用額の多い人の保険料を上げてはどうかという話が出ることがあります。

 

私はこの意見には反対です。

なぜなら、病気がちな人を経済的に今以上に追い詰めることになるからです。また、「病気になるのは自業自得」という考えが世の中に広まるのを危惧するからです。

 

 

病気がちな人を経済的に今以上に追い詰めてはならない

 

病気になるというのは、残念ながら、ある程度貧しくなるということと、密接に結び付いていると思います。

第一に、労働に割ける時間が減ります。あるいは、職を失うことすらあります。第二に、治療にお金がかかります。医療費だけでなく、交通費など、結構バカになりません。収入が減って支出が増えます。

すでに病気を持っている人というのは、程度の差はあれ、このように健康である場合と比べて、経済的にハンディキャップを負うことになります。こうしたハンディキャップを軽くしましょうという話を進めるのはわかりますが、重くしましょうということは、よいことだとは言えません。

「私は病気にならないから関係ない」「私は病気でないから関係ない」という方もいらっしゃると思います。ただ、考えてみてください、あなたの配偶者、ご両親、兄弟姉妹、お子さんが、想像したくはないでしょうが、病気になることはないとは言い切れないはずです。誰もが誰かの重荷の一部を担う可能性からは逃れることはできないのです。

 

 

「病気になるのは自業自得」という考えが世の中に広まるのを危惧する

 

「自己責任」という言葉がはやりましたね。今でもはやっているのでしょうか。

さて、病気になるのは自業自得(自己責任)でしょうか。

違うと思います。

先天的な病気と言うものがあります。これは、どう考えても自己責任ではないでしょう。

また、後天的な病気についても、なぜ病気になるかというメカニズムは、個人によって千差万別で、責任の取りようがないと思います。

喫煙する人すべてが、肺がんであっさり亡くなってしまうかというと、そうでもないという具体例を、みなさん、身近でよくご覧になっていると思います。

逆に、喫煙と違って、一生懸命働くというライフスタイルは世に広く、肯定的なものとして、認められています。しかし働くことを通じてストレスなりが蓄積した結果、病気になってしまうということはあると思います。

また、不慮の事故によってケガ(病気)を負ってしまうこともあります。

こうしたことから、病気になるのは自業自得(自己責任)であるとは言えなくなると思います。

一方、病気になるのは自業自得(自己責任)だという言説は、昨今、流行しそうな気配を感じています。その人の立場が悪くなったことに対して、それをその人に全部責任を負わせてしまえば、気楽ですし、税金等で負担するコストが減るからです(長期的にはかえって増えると私は考えますが)。

このような、弱い立場にある人を、「無責任な人」として放置し、差別さえする社会は恐ろしい社会だと感じます。こうした人たちに手を差し伸べないと、そうした人たちが感染力の強い病気に罹っているにもかかわらず、治療をしなかったり、やむなく犯罪に手を染めるといった具合に、最終的には、社会全体が暗く、不安定なものになるのではないでしょうか。