五木寛之さんの初期の小説2編

私は作家・五木寛之さんの随筆に大変感銘を受けている一人です。

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ところが、五木さんの小説は、恥ずかしながら、読んだことがありませんでした!

そこで、このゴールデンウィーク、初期の2編の作品を読みました。大きな収穫となりました。

読んだ作品は、いずれも1967年(昭和42年)に発表されたものです。『さらばモスクワ愚連隊』、『蒼ざめた馬を見よ』の2編です。この2編は、いずれも五木さんの著作のプロフィールに必ずと言っていいほど登場する、まさにこれらを読んでないのはもぐりと言うべき作品でしょう。ようやく何とかもぐりを卒業できました。

まず、直木賞受賞作である『蒼ざめた馬を見よ』を読み、次に、『さらばモスクワ愚連隊』を読みました。

 

『蒼ざめた馬を見よ』

 

一言で説明すると言論による、社会への闘争の意義を問うた真摯な作品です。

日本人ジャーナリストがレニングラード(現・サンクトペテルブルク)に派遣され、言論の自由ソビエト政権による言論弾圧のはざまでの苦悩するソビエト人作家の姿に迫るという物語です(本当はもっと込み入っているのですが、あえてざっくり述べす)。現・サンクトペテルブルクが「レニングラード」と表記されているだけで、もう、興奮しますね。

冷戦下のソビエト社会の緊張感が伝わる、大変興味深い作品でした。

今や冷戦は終結し、レニングラードサンクトペテルブルクと改称され、時代の移り変わりを感じました。まあ、イギリスがEU離脱交渉を進めたり、トランプ政権が誕生したりと、今も「まわる、まわるよ、時代はまわる」といったところですが。

 

『さらばモスクワ愚連隊』

 

元ジャズ・ピアニストである、やや(かなり?)屈折した日本人音楽プロモーターが、モスクワを仕事で訪れます。そこで、出会う、いわゆる「不良少年」と、心がぶつかりあう、激しくもあり、ほほえましくもある魂の交流を描く小品です。登場人物の一人である日本の外交官が、モスクワの「不良少年」のことを「みゆき族」のようなものだと語る場面があります。文脈から「みゆき族」が何であるのかを推察することができるのですが、ウィキペディアで確認しました。時代とともに消え去り、辞書には載っていない言葉も、ネットで調べることができる便利な時代になりましたね。また「愚連隊」という死語というべき言葉がタイトルに入っているのも、何だか惹かれます。

終盤に描かれるセッションの場面は高揚しました。

音楽を通しての、男同士の魂のぶつかりあいに国籍やら民族やら社会体制は関係ないぜ!といった、熱い作品でした。

 

 

以上、簡単に感想を述べました。両作品とも1960年代後半に発表されたこともあり、2010年代の日本社会にはあまり見られないような、若者の衝動的な暴力性を感じさせる場面が描かれていたのが印象的でした。

そんな激情を描いた五木さんですが、現在はとても穏やかで深淵な随筆を書いておられます。いや、穏やかで深淵な文章を書くことができる人こそが、きっと心の奥底に「衝動的な暴力性」を飼い慣らしておられるのでしょうね。五木さんの随筆は、まさに時代の不正に対する異議申し立てる行為に他ならないのですから。これらの作品が、五木さんの原点なのかと思うと意外であると同時に、「やはり気骨のある人なのだな」と納得させられました。

 

蛇足

みなさん、五木さんの若かりし頃のお写真をご覧になったことはありますか? 私はあります。今風に表現すると「めちゃイケメン」です。ご覧になる機会があるといいですね。